最近、あるアイデアをプロトタイプにして、クラウドファンディングするか企業へ売り込むかを考えています。この場合、どの段階で特許などの権利保護を申請したほうが良いのでしょうか?また、権利の申請には、お金と時間がかかるとのことなので申請自体に悩んでいます。
実際に、特許申請は必要なのでしょうか?
クラウドファンディングや企業への売り込み前に特許出願をすることをお勧めします。クラウドファンディングや売り込み等でアイデアを不特定多数に公開してしまうと、せっかくのアイデアが他人に模倣されてしまうおそれがあります。実際に、あるクラウドファンディングではプロジェクトの進行中に模倣された商品が販売されてしまったといった問題が生じています(https://tasko.jp/blog/jidori_report2/)。
このような問題に対し、クラウドファンディングでのプロジェクト公開前に特許出願をしておくことで、模倣を抑止することができます。また、クラウドファンディングや売り込みによってアイデアが一度公知になると、いわゆる新規性が失われるので、原則としてそのアイデアの特許を取得することができなくなります。したがって、公開の「前」に特許出願をしておくことが肝要です。
また、特許権の効果の一つとして、投資家の投資リスクを低減することがあります。クラウドファンディング後の展開を考えた場合、企業側からしても特許権によって独占状態が作られているほうが投資しやすいですし、金融機関からの融資も受けやすくなるでしょう。
なお、上記ではアイデア(特許)についてのみ述べましたが、デザイン(意匠)や商品名(商標)についても同様の注意を払っておくべきです。あるアイデアをクラウドファンディングする際に使った商品名が、それを見た他人に勝手に商標登録されてしまい、その商品名をその後使うことができなくなったという事例が実際にあります。
特許の審査については、時間はかかりますが(最初の審査結果まで約9か月)、一旦特許出願しておけば、権利取得までの間も一定の保護を受けることが出来ます。また、「特許出願中」と表明するだけで、一定の模倣抑止効果を期待できます。審査期間を短くしたければ、早期審査やスーパー早期審査という審査を迅速化するサービスを利用することもできます。最初の審査結果が通知されるまでの期間を、早期審査で約4か月、スーパー早期審査で約2か月程度に縮めることができます。OKです。
また、費用についても、特許庁への手続きに要する費用の減免制度(最大で1/3に低減)があります。弁理士などの代理人の費用についても、日本弁理士会による援助制度があります(詳しくは(https://www.jpaa.or.jp/activity/support/assistance/ )また、代理人の費用を除けば、一番お金がかかるのが審査請求という手続きです(約18万円(減免制度を受ければ約6万円))。出願日から3年経過するまでは審査請求をすることができますので、とりあえず出願だけしておいて、クラウドファンディングや売り込みが成功してお金に余裕ができたら審査請求をするというのも一案です。